AZ31マグネシウム合金板の温間成形性


概要

 マグネシウム合金は,実用金属としては最も軽量な材料として,自動車等の輸送機械軽量化への効果が期待され,材料開発と成形・加工の両面から研究開発が進められている.また,リサイクル性も良いため,循環型社会の構築に適した材料と位置づけられている.一方,マグネシウム合金製品の多くはプレス成形ではなく,ダイキャストやチクソモールディングで作られている.これはマグネシウム合金の結晶構造が稠密六方構造であるため,室温付近では延性に乏しく,極めて塑性加工性が悪いためである.この成形性の悪さを克服する一つの方法として温間成形がある.

 そこで,本研究では結晶粒径と板厚の異なる二種類のAZ31マグネシウム合金板について,種々の温度およびひずみ速度において変位制御二軸引張り試験を行い,降伏挙動におよぼす温度とひずみ速度の影響を調査・検討している.

 なお,本研究は弓削商船高専・中哲夫先生の研究室との共同研究である.


実験方法

実験方法1

実験方法2

▲二軸試験片形状・二軸引張試験機…本研究に用いた試験片と試験機を示す.上図は十字型試験片形状で,下写真は二軸引張試験機である.二軸引張試験機は写真に示すように,水平面上に互いに直交するように設置された二対の油圧アクチュエータ(ストローク150mm,容量24kN)で構成されている.作動は油圧サーボシステムによる速度制御としている.

制御部1

▲制御部の全体図…左は制御・モニター用のパソコンで,上にはサーボアンプ等が設置してある.

実験結果

降伏曲面

▲AZ31マグネシウム合金板の降伏曲面を示す.この材料は細粒材・板厚0.8mmであり,試験速度を中速(0〜0.55mm/min)として二軸引張試験を行った結果である.降伏曲面は,Barlat2000ないしLogan-Hosfordの降伏関数に近い形状であることが明らかになった.

等塑性仕事曲面

▲AZ31マグネシウム合金板の等塑性仕事曲面.等塑性仕事曲面とは,単軸引張から等二軸引張までの各状態において,塑性仕事が同じ時点の応力を降伏曲面のように線で結び曲線で示したものである.これは温間塑性加工において重要な降伏後のマグネシウム合金板の変形挙動を知るために必要不可欠なものである.

MARC1

▲汎用有限要素解析コードMARCによる高温度・等二軸引張試験のシミュレーション結果.三角形六節点要素,要素数5100,節点数10541として十字型試験片の1/4モデルについて計算を行っている.この図は等二軸負荷時の相当応力分布を示しており,試験片中心の測定対象部では均一な応力分布が得られていることが確認できる.


本研究に関する論文・発表など

・山本昌幸, 畑瀬雄一, 中哲夫, 上森武, 吉田総仁: AZ31マグネシウム合金板の温間成形性, 日本塑性加工学会中国四国支部第5回学生研究発表会講演論文集, (2004.12), (pp.9-10).


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